世界からもっとも注目を集める日本人バーテンダーのひとり鹿山博康さん(Bar BenFiddich)による薬草酒を使ったオリジナルマンハッタンを商品化したボトルドカクテル「BENFIDDICH MANHATTAN」。
鹿山さん流マンハッタンとはどのようなものなのか、開発者である鹿山さんと製造を行った山崎勇貴さん(株式会社JCC AGENT)にお話をうかがいました。
鹿山さんらしいマンハッタンが出来上がりましたね。
鹿山 一般的なマンハッタンのレシピではベルモットを使うんですけど、そもそもベルモットも自体もワインベースの薬草酒なので、それが別のものに置き換えられてもいいんじゃないかなって思うんです。ベンフィディックらしさということで薬草酒のマンハッタンは店でもバシバシ出していますが(笑)、今回は「バータイムズ ボトルカクテル」用に完全オリジナルレシピになっています。
10種の試作からこのレシピを選んだ決め手は何でしたか。
鹿山 新しくカクテルをつくる時はいつもそうですが、今回の「BENFIDDICH MANHATTAN」でも、材料をミリ単位で調整するほか、ビターズを足す、フルーツジュースを足す、リキュールを足すなどタイプ別に10種類つくりました。その中でこのレシピに決めたのは、全体調和が一番良かったから。ストレートでもオンザロックでもすごく美味しいし、カシスリキュールを少量使っているのでソーダを合わせた時に甘さがにゅーっと伸びる感じが良かったですね。カシスの甘みがちゃんと生きてます。
鹿山さんのレシピが完全に再現されていますね。製造工程でどんな部分に苦労されましたか。
山崎 製造自体は比較的スムーズにできましたね。製法としては、何十ℓという大きな容器にそれぞれの材料を入れて合わせるんですが、ロットによって味が変わるなんてことがあってはいけないので、各材料は容量を計ることはもちろん、0.1g単位で重量も測定していました。そうすればブレは確実になくなりますから。
鹿山 容器に入れて撹拌するんですか。
山崎 はい。全工程の中で混ぜはかなり重要です。量産する時に意外に大事だなって経験上思うのは、糖分なんですよ。糖分って比重が重いので下に溜まるんですよね。今回はカシスリキュールを使っているので、材料を合わせる順番としては常に最後にしてしっかりと混ぜる必要がありました。それも手動で。
鹿山 すごい、何だか杜氏みたいですね(笑)。
こうして完成してみると、ボトルドカクテルの魅力はどんな点にあると思いますか。
鹿山 いや、それはなんてったってカクテルがボトルに入っているという点に尽きますよ(笑)。あとは、新型コロナの影響で営業自粛ってなった時に、みんながよく分からなかったことが、ボトルドカクテルをきっかけに知ることができたと思っています。どういうことかっていうと、酒類と酒類の混和は酒造にあたるという日本ならではの法律があって、ボトルドカクテルって意外にハードルが高いんですよ。でも、山崎さんのように酒造免許を持っている方に委託することで、営業自粛、外出自粛の中でもいろんな人とつながることができるという良さはあると思います。
では最後に「BENFIDDICH MANHATTAN」の味わいの特徴を教えてください。
鹿山 「BENFIDDICH MANHATTAN」は、カクテルとしてはマンハッタンのカテゴリーに入るんですが、ベルモットではなく特にビター感の効いた薬草酒を使用しているので苦味の奥行きがあります。そこに果実味のあるカシスリキュールも使っているので、甘みとフルーティーさも感じます。そしてウイスキーが軸にしっかりあるので、非常に立体感のある味わいになっていると思います。特にハイボールにすると苦味の余韻をより感じます。日本人にはあまり馴染みのない苦味の奥行き、苦味の旨み、苦味の良さが加わったウイスキーカクテルに仕上がったと思います。